中性子星って知ってますか。
ブラックホールほど名前は有名じゃないかもしれません。
でもこれ、
めちゃくちゃやばいです。
まず大きさからいきます。
直径、 だいたい20km前後。
都市ひとつに収まりそうなサイズです。
「なんだ、意外と小さいじゃん」
と思いますよね。
問題は、 その中に何が入っているかです。
太陽級の質量が入っています。
……待ってください。
もう一度いきます。
直径20kmくらいの球に、
太陽と同じくらいの重さを押し込んでいます。
太陽ですよ?
直径約140万kmある、 あの太陽です。
それを都市サイズまで潰す。
どういう詰め方をしたらそうなるんですか。
しかも、 まだ入口です。
角砂糖1個で、約10億トン。
中性子星のすごさを知るには、 密度を見るのが一番早いです。
中性子星を構成する物質を、 角砂糖1個くらい取り出したとします。
本当に小さいやつです。
コーヒーにポンと入れる、 あの角砂糖。
それが地球上では、
約10億トン。
……角砂糖ですよ?
NASAは、 およそ山ひとつ分に匹敵する重さだと説明しています。
机の上に置けるサイズなのに、 山。
もう「重い」の意味が壊れています。
コーヒーに入れたらどうなるか、みたいな話ではありません。
机も床も建物も、 そういう次元ではありません。
私たちの身の回りの物質は、 実はかなりスカスカです。
原子の内部には、 原子核と電子の間にものすごく広い空間があります。
中性子星では、 恒星の崩壊による猛烈な圧力で、 その「普通の物質の余裕」がほとんどありません。
電子と陽子が押しつぶされ、 中性子を主体とした極端な状態の物質になります。
宇宙、本気で圧縮するとここまでやります。
そもそも、どうやったらこんなものができるの?
中性子星は、 最初からこんな姿で生まれるわけではありません。
もともとは、 太陽よりずっと重い普通の恒星です。
恒星は内部で核融合を起こしながら、 外へ押し広げようとする力と、 自分自身の重力とのバランスを保っています。
ところが、 燃料を使い果たすと、 そのバランスが崩れます。
すると、
中心部が一気に崩壊します。
巨大な星の中心が、 自分自身の重力に耐えられなくなる。
そして超新星爆発。
星の外側は宇宙へ吹き飛ばされ、 中心には猛烈に圧縮された核が残ります。
それが中性子星です。
ここ、 考えるとかなりすごいです。
夜空に普通に光っていた巨大な恒星が、 最後には、
都市サイズの超高密度天体になる。
恒星の人生、 最後の展開が激しすぎます。
しかも、毎秒716回転するやつがいます。
密度だけでも十分お腹いっぱいなんですが、 中性子星にはもう一つ、 とんでもない特徴があります。
ものすごく速く回転するものがいます。
パルサーと呼ばれるタイプです。
NASAが紹介している最速クラスのものでは、
1秒間に716回転。
……716回。
1秒ですよ?
10秒じゃありません。
1秒間です。
都市サイズで、 太陽級の質量を持つ天体が、
毎秒716回、回っています。
想像してみてください。
いや、 無理ですよね。
私も無理です。
数字としては読めます。
でも頭の中で映像にしようとすると、 完全に処理落ちします。
宇宙の数字は、たまに人間の想像力を置き去りにします。
なんでそんなに速く回れるの?
これも面白いところです。
恒星が潰れて小さくなると、 回転速度が上がります。
フィギュアスケートの選手が、 腕を広げた状態から体の近くへ腕を縮めると 回転が速くなるのを見たことがあると思います。
あれと同じように、 角運動量保存が効いています。
巨大だった恒星が、 一気に都市サイズへ縮む。
すると回転も、
とんでもなく速くなる。
なるほど。
物理としては分かります。
理屈は分かる。
でも、
毎秒716回はやりすぎです。
宇宙の灯台みたいに光ります。
パルサーという名前が付いた中性子星は、 強力な磁場を持ち、 その磁極付近からエネルギーのビームを放ちます。
しかも、 そのビームの向きと回転軸が少しずれている。
なので中性子星が回るたびに、 ビームが宇宙空間をぐるぐる掃くように動きます。
地球の方向へビームが向いた瞬間だけ、 私たちは電波やガンマ線などのパルスを観測します。
つまり、
宇宙に浮かぶ超高速の灯台です。
これ、 めちゃくちゃ面白くないですか。
直径20kmくらいの星が、 猛烈な勢いで回転しながら、 宇宙空間へ規則正しくビームを飛ばしている。
しかも私たちは、 そのビームが地球を横切るタイミングを測ることで その星の存在を知っています。
地球から何千光年も離れた場所にある 都市サイズの天体の回転を、
「今また回った」
と観測しているわけです。
人類もなかなかやります。
重力も当然、普通ではありません。
太陽級の質量が都市サイズに入っているので、 表面の重力もすさまじいことになります。
中性子星の表面では、 地球とは比較にならないほど強烈な重力が働きます。
そこへ何かを落としたら、 「落ちる」というより、 とんでもない速度で表面へ叩きつけられます。
普通の星ならまだ、 「巨大な天体」という感覚で考えられます。
でも中性子星は、
大きくないのに、重力がおかしい。
ここが妙に怖くて、 妙に面白い。
巨大だからすごいんじゃありません。
小さいところへ、 ありえないほど詰め込まれているからすごい。
しかも中身が、まだよく分かっていません。
そして、 個人的に一番ワクワクするのがここです。
中性子星の内部が、 完全には分かっていません。
あれだけ極端な圧力の中で、 物質が実際にどんな状態になっているのか。
中性子だけなのか。
もっと特殊な粒子が現れるのか。
内部にどんな層があるのか。
今も研究されています。
しかも、 この環境を地球の研究室で丸ごと再現することはできません。
つまり中性子星そのものが、
宇宙にしか存在しない巨大な物理実験室です。
これがたまらないんです。
宇宙には、 「理論上こうなるはず」という話だけじゃなく、
本当にそこへ行かないと存在しないような 極端な環境が実物としてあります。
私たちはそこへ行けない。
でも光やX線、 電波を観測して、 中で起きていることを少しずつ推理していく。
宇宙、最高の謎解きを用意してきます。
そして、もう少し潰れたらブラックホール。
さらに面白いのが、 中性子星は物質が耐えられる限界にかなり近い存在だということです。
重力がさらに強くなり、 ある限界を超えると、
中性子星ですら自分を支えられなくなります。
その先にあるのが、 ブラックホールです。
つまり中性子星は、
「普通の物質として踏ん張れるギリギリの世界」
を見せてくれているような天体でもあります。
これ、 ものすごくロマンがあります。
宇宙が、 物質を限界まで押しつぶしたら何が起きるのか。
その答えが、 夜空のどこかに実物として存在しているんです。
今回のコレやばい指数
※「コレやばい指数」は当サイト独自の表現で、 科学的な評価指標ではありません。
ということで今回の結論です。
直径約20km。
太陽級の質量。
角砂糖1個で約10億トン。
毎秒716回転するものまでいる。
しかも内部の物質がどうなっているのか、 まだ完全には分かっていない。
……すごくないですか。
怖い。
意味が分からない。
でも、
だからもっと知りたくなる。
宇宙には、 人間の常識では想像できない状態の物質が、 「理論上」ではなく 本当に存在しています。
そして私たちは、 遠く離れた地球から、 それを少しずつ理解し始めています。
これだから宇宙は面白い。
そして、めちゃくちゃ面白い。

