宇宙には、 始まりがあると考えられています。
約138億年前。
ビッグバン。
では、 当然こう思います。
始まりがあるなら、終わりは?
宇宙って、 最後どうなるんですか。
星が全部爆発する?
ブラックホールだらけになる?
全部一か所に潰れる?
それとも、 永遠にこのまま?
現在の観測から考えると、 かなり有力なのは、
ものすごく長い時間をかけて、宇宙がどんどん暗く、冷たく、何も起きない世界へ向かう未来です。
……嫌な終わり方ですね。
爆発して終わる方が、 まだ派手です。
宇宙の場合、
何も起きなくなって終わる可能性があります。
まず、宇宙は今も広がっています。
宇宙は静止していません。
遠い銀河ほど、 私たちから遠ざかっていることが観測されています。
これは、 銀河が単純に宇宙空間を飛び去っているだけではなく、
空間そのものが膨張している
と考えられています。
ここまでは、 以前の記事でも出てきました。
でも問題は、 その先です。
普通なら、 重力があるんだから、 膨張は少しずつ遅くなりそうですよね。
実際、 昔はそう考えられていました。
ところが観測すると、
宇宙の膨張、遅くなるどころか加速していました。
……加速?
広がってるだけでも十分なのに、 まだ速くなるんですか。
犯人候補が「ダークエネルギー」。
宇宙の膨張を加速させている原因として、 現在もっともよく使われている名前が、
ダークエネルギー。
名前は付いています。
でも、
正体は分かっていません。
これ、 宇宙あるあるです。
分からないものに、 とりあえず名前だけ付いています。
NASAによると、 宇宙全体のエネルギー・物質のうち、 およそ7割近くをダークエネルギーが占めると考えられています。
なのに、 何なのかは分からない。
宇宙の大部分について、
「何かあるのは分かる。でも何なのか分からない。」
で研究が進んでいます。
相変わらずです。
未来を決めるのは、この正体不明のやつ。
宇宙が今後どうなるかは、 ダークエネルギーが未来でも同じように働くのか、 それとも性質が変わるのかで変わります。
たとえば、 ダークエネルギーが今と同じように働き続ければ、
宇宙は今後も膨張し続ける
と考えられます。
しかも、 遠くの銀河はどんどん離れていく。
やがて、
他の銀河が見えなくなるほど遠ざかる未来
も考えられています。
今は宇宙望遠鏡で、 遠い銀河を山ほど見ています。
でもものすごく遠い未来では、
夜空を見ても、
自分たちの近くの銀河しか見えない時代
が来るかもしれません。
未来の文明、「宇宙には他の銀河がある」と分からないかもしれない。
これ、 かなり面白い話です。
宇宙の膨張が続くと、 遠い銀河は観測可能な範囲の外へ離れていきます。
その光が、 未来の観測者へ届かなくなる。
すると、 ものすごく遠い未来に文明が存在したとしても、
「宇宙には自分たちの銀河しかない」
と思う可能性があります。
私たちは今、 宇宙が膨張している証拠を観測できます。
宇宙背景放射も見える。
遠い銀河も見える。
でも、 未来の宇宙では、
その証拠自体が見えなくなる可能性があります。
科学って、 いつ観測するかでも得られる答えが変わるんですね。
そのうち、星を作る材料も減っていく。
今の宇宙では、 新しい星が生まれています。
巨大なガス雲が重力で集まり、 星になる。
その星が光る。
そして寿命を迎える。
でも、 星を作るためのガスは無限ではありません。
長い時間が経つと、
新しい星が生まれるペースはどんどん落ちていきます。
今いる星も、 いつか寿命を迎える。
大質量星は短命。
小さい星は長生き。
でも、 永遠ではありません。
宇宙から、少しずつ明かりが消えていきます。
最後まで粘るのは、小さな星たち。
太陽よりずっと小さい赤色矮星は、 燃料を非常にゆっくり使います。
そのため、 太陽よりはるかに長く光り続けると考えられています。
でも、 どれだけ長生きでも、 燃料は有限です。
いつかは、
星として光る時代そのものが終わります。
現在の宇宙を見ると、 星だらけです。
でも宇宙の歴史全体で見ると、
「星が普通に光っている時代」の方が短い可能性があります。
私たち、 かなりいい時代に宇宙を見ています。
星が消えたあと、何が残る?
星が寿命を迎えると、 いろいろな残骸が残ります。
白色矮星。
中性子星。
ブラックホール。
惑星。
その他、 冷えた天体。
つまり、 宇宙がすぐ空っぽになるわけではありません。
しばらくは、
「光る星はほとんどないけど、物は残っている宇宙」
になります。
夜空どころか、
ほぼ全部夜です。
ブラックホールが最後の主役になる。
ものすごく遠い未来では、 ブラックホールが重要な存在になります。
ブラックホールは、 一度できたら永遠に残るような印象があります。
光すら逃げられない。
最強。
最後まで生き残りそうです。
ところが、
ブラックホールも永遠ではないと考えられています。
ここで出てくるのが、 ホーキング放射です。
ブラックホール、最後は蒸発するらしい。
量子論を考えると、 ブラックホールは完全に真っ黒ではなく、 ごくわずかな放射を出すと考えられています。
この効果によって、
ブラックホールは少しずつ質量を失います。
ものすごくゆっくりです。
本当に、 ものすごくゆっくりです。
恒星質量級のブラックホールですら、 蒸発には現在の宇宙年齢とは比較にならないほど長い時間が必要と考えられています。
超大質量ブラックホールなら、 さらに長い。
でも、 理論上は、
あのブラックホールですら最後には消える。
宇宙、 永久保存を許してくれません。
星も消える。ブラックホールも消える。
では、 そこまで行くと何が残るのか。
非常に低エネルギーの粒子。
放射。
ものすごく広がった空間。
宇宙は膨張し続け、 エネルギーはどんどん薄く広がっていく。
すると、
大きな変化を起こせるエネルギー差がほとんどなくなっていきます。
ここで出てくるのが、
熱的死
という考え方です。
「熱的死」って、全部熱くなるわけじゃありません。
名前だけ聞くと、 宇宙全体が灼熱になるように見えます。
逆です。
ものすごく冷たく、 変化が起こりにくい状態へ向かいます。
大事なのは、 温度そのものというより、
エネルギーの偏りがなくなること。
熱いところと冷たいところ。
高いところと低いところ。
燃料があるところとないところ。
こうした差があるから、 物事が起きます。
星が光る。
物が動く。
化学反応が起きる。
生命が活動する。
でも、 宇宙全体が限界まで均されてしまうと、
何かを起こすための「差」がなくなります。
つまり最後は「何も起きない」。
爆発ではありません。
宇宙が突然消えるわけでもありません。
ただ、
起きることがなくなる。
星はない。
光源もほぼない。
ブラックホールもいない。
物質も極端に希薄。
温度差もほとんどない。
時間だけは進む。
でも、
見ていても何も起きない。
……宇宙の終わり、 静かすぎません?
しかも「終わった瞬間」がない。
ここも面白いです。
熱的死には、
「はい、今宇宙が終わりました」
という瞬間がありません。
どんどん星が減る。
どんどん暗くなる。
どんどん冷える。
どんどん何も起こらなくなる。
そして、
いつの間にか、ほぼ完全に静かな宇宙になっている。
終わるというより、永遠にフェードアウトしていく感じです。
派手さゼロ。
スケールだけ最大。
ただし、これが確定した未来ではありません。
ここはかなり重要です。
熱的死は、 現在の観測結果と、 ダークエネルギーが今後も似た性質を保つという前提から考えられる、 有力な未来の一つです。
でも、
宇宙の未来はまだ確定していません。
なぜなら、 ダークエネルギーの正体が分かっていないからです。
未来でも一定なのか。
変化するのか。
弱くなるのか。
強くなるのか。
そこが分かっていません。
宇宙の終わりを決める重要人物の正体が、まだ不明です。
人物じゃないですけど。
別案その1。「ビッグクランチ」。
宇宙の終わりとして昔から有名なのが、 ビッグクランチです。
宇宙の膨張がどこかで止まり、
今度は重力によって縮み始める。
銀河が近づく。
宇宙全体がどんどん圧縮される。
そして最後には、
宇宙全体が極端に高密度な状態へ戻る。
始まりがビッグバン。
終わりがビッグクランチ。
かなり分かりやすいです。
ただし、 現在観測されている加速膨張をそのまま考えると、 単純なビッグクランチは主流の予想ではありません。
宇宙、今のところ縮む気配より広がる気満々です。
別案その2。「ビッグリップ」。
もう一つ、 かなり物騒な案があります。
ビッグリップ。
もしダークエネルギーが未来に向かってどんどん強くなるタイプだった場合、
宇宙の膨張が強くなりすぎる
可能性があります。
すると、 最初は銀河団がばらばらになる。
次に銀河。
さらに恒星系。
惑星。
そして理論上は、
最終的に原子レベルまで引き裂かれるシナリオ
も考えられます。
宇宙の膨張、 やりすぎです。
ただしこれも、 ダークエネルギーの性質次第です。
確定ではありません。
終わり方が分からない理由、だいたいダークエネルギー。
結局、 宇宙の未来を考えると、 またここへ戻ってきます。
ダークエネルギーとは何なのか。
宇宙の大部分を占めていると考えられる。
膨張を加速させている。
でも、
正体が分からない。
なので、
宇宙の始まり。
宇宙の現在。
宇宙の未来。
全部調べても、
最後に「ダークエネルギーって何?」へ戻ってきます。
ラスボスがまだシルエット状態です。
でも、人類は本気で宇宙の最後を調べています。
面白いのは、 このスケールです。
私たち人間の寿命は、 せいぜい100年程度。
文明の歴史ですら、 宇宙から見れば一瞬です。
なのに、
何兆年どころではない未来の宇宙を真面目に予測しています。
遠い超新星を観測する。
銀河の分布を測る。
宇宙背景放射を調べる。
ダークエネルギーの性質を調べる。
そして、
「この宇宙、最終的にどうなるんだろう」
を研究しています。
自分たちが絶対に見ることのできない未来です。
それでも知りたい。
人類も相変わらずです。
宇宙の未来を考えると、今の宇宙がすごく特殊に見える。
今は、 星があります。
銀河があります。
超新星が爆発します。
惑星が生まれます。
新しい星も作られています。
光があります。
生命もいます。
でも、 もし熱的死が未来なら、
こういう「宇宙が賑やかな時代」は永遠ではありません。
私たちは、 宇宙がまだ活動的な時代にいます。
星が光っている時代。
銀河が見える時代。
宇宙の歴史を観測できる時代。
宇宙を見るには、実はかなり当たりの時代かもしれません。
「永遠」って、想像してたのと違う。
永遠に続く宇宙。
そう聞くと、 星も銀河もずっと残るような気がします。
でも、 宇宙が永遠に存在することと、
宇宙で永遠に何かが起き続けることは、
まったく別です。
空間はある。
時間もある。
でも、 ほぼ何も起こらない。
そんな未来もあり得る。
「宇宙は終わらない。でも物語は終わる。」
みたいな話です。
……ちょっと怖いですね。
今回のコレやばい指数
※「コレやばい指数」は当サイト独自の表現で、 科学的な評価指標ではありません。
今回の話をまとめます。
宇宙は、 現在も膨張しています。
しかも、 その膨張は加速していると考えられています。
もしこの状態が長く続くなら、
銀河は離れていく。
新しい星は減る。
今ある星も消える。
白色矮星や中性子星が残る。
ブラックホールが残る。
そして理論上、 そのブラックホールさえ蒸発する。
最後には、
ほとんど何も起きない、暗く冷たい宇宙へ向かう可能性があります。
これが、 いわゆる熱的死です。
ただし、 宇宙の未来はまだ確定していません。
ビッグクランチ。
ビッグリップ。
その他の可能性もあります。
そして鍵を握るのが、
正体不明のダークエネルギー。
宇宙がどう始まったかを調べても謎。
宇宙がどう終わるかを調べても謎。
結局、
宇宙は最後まで分からないことだらけです。
……だから面白いんですけどね。
最後は爆発ではなく、「何も起きなくなる」という終わり方かもしれない。

