ビッグバン。
宇宙の始まりと言えば、 まずこの言葉が出てきます。
そして多くの人が、 こんな映像を想像すると思います。
真っ暗な宇宙空間。
何もない場所に小さな点がある。
そこが突然、
ドカーン!!
と爆発して、 星や銀河が四方八方へ飛び散った。
……実は、
そのイメージ、かなり違います。
ビッグバンは、 「宇宙の中で起きた爆発」ではありません。
もっと意味が分からない話です。
空間そのものが膨張したんです。
……ちょっと待ってください。
空間そのもの?
もうこの時点で、 宇宙が本気を出してきます。
ビッグバンの前に「宇宙空間」があったわけではない。
ここが一番大事です。
よくあるイメージでは、
広い宇宙空間の真ん中に、 すごく小さな何かがあって、
それが爆発して宇宙になった。
という感じですよね。
でもNASAは、 ビッグバンを
「空っぽの空間の中で起きた爆発」
として考えるのは正確ではないと説明しています。
なぜなら、
空間そのものが宇宙の一部だからです。
つまり、
「ビッグバンは宇宙のどこで起きたの?」
と聞くこと自体が、 少し変なんです。
宇宙のどこか一点から、 物質が飛び出したわけではありません。
宇宙全体が、 昔は今よりずっと高温で高密度だった。
そして、
空間そのものが広がってきた。
これが現在の宇宙論の基本的な考え方です。
爆発じゃない。
空間が伸びた。
いや、 その方がよっぽどやばくないですか。
宇宙には「爆発の中心」がない。
普通の爆発には、 中心があります。
花火なら、 打ち上がった場所。
爆弾なら、 爆発地点。
そこから外側へ広がります。
じゃあ宇宙も、 どこかにビッグバンの中心があるのか。
ありません。
少なくとも、 「この場所が宇宙の中心です」 という地点は見つかっていません。
銀河を観測すると、 遠くの銀河ほど私たちから速く遠ざかっているように見えます。
でもこれは、 地球が宇宙の中心だからではありません。
別の銀河から見ても、 周囲の銀河が離れていくように見えます。
どこから見ても、周りが遠ざかっていく。
よく使われる例が、 風船です。
風船の表面に点をいくつか描きます。
風船を膨らませると、 すべての点同士の距離が広がります。
でも、 風船の表面には 「膨張の中心」はありません。
宇宙の膨張も、 これに少し似ています。
もちろん宇宙は風船そのものではありません。
でも、
「全部が全部から離れていく」
というイメージには役立ちます。
宇宙は最初、星どころか原子すら作れなかった。
現在の宇宙には、 星があります。
銀河があります。
惑星があります。
私たちもいます。
でも宇宙が始まった直後は、 そんなものはありませんでした。
とにかく、
熱すぎました。
高温すぎて、 普通の原子すら安定して存在できません。
NASAによると、 ビッグバン直後の宇宙は、 非常に高温で密度の高い状態でした。
宇宙が膨張するにつれて、 少しずつ温度が下がっていきます。
数分後には、 水素やヘリウムの原子核が作られるようになりました。
でも、 まだ電子が自由に飛び回っています。
光も、 電子にぶつかり続けて、 遠くまで進めません。
宇宙全体が、光の通れない巨大な霧みたいな状態です。
星空どころではありません。
宇宙そのものが、 まだ透明じゃないんです。
約38万年後、宇宙が突然「見える」ようになる。
ここからが本当に面白いです。
宇宙がさらに膨張して、 温度が下がります。
すると、 電子と原子核が結びついて、 安定した原子が作られるようになります。
NASAによると、 これはビッグバンからおよそ
38万年後。
この頃になると、 光が電子に邪魔されにくくなります。
そして初めて、
光が宇宙を自由に進めるようになります。
その光が、 今も宇宙中を飛び続けています。
それが、 宇宙マイクロ波背景放射。
英語では、 CMB。
これ、 ものすごいものなんです。
私たちは、約138億年前の宇宙の「残り光」を見ている。
宇宙マイクロ波背景放射は、 初期宇宙の名残です。
つまり、
宇宙が赤ちゃんだった頃の光です。
今でも観測できます。
NASAのWMAPや、 ESAのPlanckなどの観測によって、 宇宙全体に広がるこの微かな光が詳しく調べられてきました。
しかも、 この光のわずかな温度のムラが、
後に銀河や銀河団へ成長していく 「種」になったと考えられています。
ちょっと考えてみてください。
私たちは今、 地球にいながら、
138億年前の宇宙の状態を観測しているんです。
タイムマシンじゃありません。
望遠鏡です。
宇宙、 過去の写真まで残してくれています。
でも、ビッグバンそのものは見えない。
では、 そのままもっと昔を見れば、 ビッグバンの瞬間まで見えるのか。
残念ながら、
光では見えません。
さっきの通り、 約38万年より前の宇宙は、 光が自由に進めない状態でした。
だから、 電磁波を使った望遠鏡では、 そこより前を直接見ることが難しい。
NASAも、 ビッグバンそのものを直接見ることはできないと説明しています。
宇宙最初の38万年くらいは、光の壁の向こう側です。
……めちゃくちゃ見たくないですか。
見えないと言われると、 余計に見たくなる。
これが宇宙です。
じゃあ、ビッグバンの前は何があった?
ここまで来ると、 当然この質問が出ます。
「ビッグバンの前には何があったの?」
これは、 宇宙最大級の質問です。
そして答えは、
まだ分かっていません。
そもそも、 一般相対性理論では 時間そのものも宇宙の一部です。
そのため、
「時間が始まる前に何があった?」
という質問自体が、 正しくない可能性もあります。
……もう日本語が追いつきません。
「前」という言葉を使うには、 時間が必要です。
でも、 その時間自体が宇宙と一緒に始まった可能性がある。
では、 「前」とは何なのか。
宇宙、 質問の仕方まで壊してきます。
さらに最初期には「インフレーション」があったかもしれない。
宇宙誕生直後については、 インフレーションという考えがあります。
これは、 ごく初期の宇宙が、
ものすごい勢いで急膨張した
というモデルです。
NASAは、 この急膨張によって、 現在観測される宇宙の性質の多くを説明できるとしています。
ただし、
何がインフレーションを引き起こしたのか。
その物理的な仕組みは何なのか。
そこはまだ研究中です。
宇宙の始まりを調べると、謎の中からまた謎が出てきます。
最高です。
答えに近づくたびに、 新しい疑問が増えていきます。
そして今も、宇宙は膨張しています。
ビッグバンは、 138億年前に終わった昔のイベントではありません。
宇宙は、
今この瞬間も膨張しています。
遠くの銀河の光を調べると、 多くの銀河が互いに遠ざかっていることが分かります。
さらに観測から、 宇宙の膨張は単に続いているだけでなく、
加速している と考えられています。
なぜ加速しているのか。
そこで出てくるのが、
ダークエネルギー。
……また出ました。
宇宙の始まりを調べていたはずなのに、 今度は宇宙の未来の謎につながっていきます。
ほんとに終わりません。
138億年調べても、まだ「最初」が分からない。
ここまで人類は、 ものすごいところまで来ています。
宇宙が約138億年前に、 非常に高温で高密度の状態だったこと。
宇宙が膨張していること。
約38万年後の光が今でも残っていること。
初期宇宙のわずかなムラが、 後の銀河につながったこと。
ここまで分かっています。
それでも、
「なぜ宇宙が始まったのか」は分かっていません。
何が最初の膨張を起こしたのか。
本当に「始まり」があったのか。
ビッグバン以前という概念に意味があるのか。
まだ答えはありません。
でも、
だから面白いんです。
宇宙最大の謎が、 まだ残っています。
しかも、 これは遠い未来の人類だけの話じゃありません。
今この瞬間も、 世界中の研究者がその答えを探しています。
今回のコレやばい指数
※「コレやばい指数」は当サイト独自の表現で、 科学的な評価指標ではありません。
今回の話をまとめます。
ビッグバンは、 空っぽの宇宙空間で起きた巨大爆発ではありません。
宇宙そのものが、 非常に高温で高密度の状態から膨張してきました。
宇宙の年齢は、 約138億年。
約38万年後には宇宙が透明になり、 その頃の光を今でも観測できます。
でも、
宇宙がなぜ始まったのかは、まだ分かっていません。
138億年分の宇宙を調べて、
最初の最初だけ、 まだ大きな謎として残っている。
……これ、 めちゃくちゃワクワクしません?
宇宙は、 昔の話を知れば知るほど、
「その前は?」
「じゃあなぜ?」
と次の疑問が出てきます。
答えが出るたびに、 宇宙がもっと広がって見える。
これだから、 宇宙はやめられません。
宇宙は「爆発した」のではなく、空間ごと広がった。

