宇宙には、 星がものすごい数あります。
私たちの天の川銀河だけでも、 恒星は何千億個規模。
しかも、 天の川銀河だけではありません。
宇宙には、 さらに大量の銀河があります。
つまり、
星の数なんて、もう数える気をなくすレベルです。
そして現在では、 太陽以外の恒星を回る惑星も大量に見つかっています。
そこで、 かなり自然な疑問が出ます。
じゃあ宇宙人、どこにいるんですか?
これだけ星がある。
惑星もある。
宇宙は約138億年も存在している。
なのに、
今のところ地球外文明の存在を示す決定的な証拠は見つかっていません。
……静かすぎません?
これが「フェルミのパラドックス」。
この疑問は、 一般に フェルミのパラドックス と呼ばれています。
物理学者エンリコ・フェルミに由来する名前です。
ものすごく単純に言えば、
「宇宙に文明がたくさんあるなら、なぜその証拠が見えないの?」
という問題です。
宇宙が小さいなら、 まだ分かります。
星が数百個しかないなら、 生命が地球だけでも不思議ではありません。
でも実際は、
星、多すぎです。
しかも、 宇宙の年齢も長すぎる。
だから逆に、
「これだけ条件があるのに誰も見つからない」
こと自体が謎になります。
昔は「惑星なんて珍しいのでは?」と思えました。
昔なら、 説明は簡単でした。
太陽系みたいな惑星系そのものが、 宇宙では珍しいのかもしれない。
だから、 生命も珍しい。
これなら納得できます。
ところが、 観測技術が進みました。
ケプラー宇宙望遠鏡。
TESS。
地上の大型望遠鏡。
いろいろな方法で系外惑星を探した結果、
惑星って、どうやら全然珍しくない。
となってきました。
巨大ガス惑星。
地球サイズの惑星。
複数の惑星を持つ恒星。
いろいろ見つかっています。
宇宙、思っていたより惑星だらけでした。
「生命が住めそうな場所」も見つかっています。
惑星があるだけでは、 生命は生まれません。
そこで重要になるのが、 ハビタブルゾーンです。
ざっくり言えば、
惑星の表面に液体の水が存在できる可能性がある距離。
恒星に近すぎれば、 暑すぎる。
遠すぎれば、 寒すぎる。
その中間です。
そして実際、
ハビタブルゾーン付近を回る地球サイズ級の惑星候補も見つかっています。
もちろん、
ハビタブルゾーンにいる=生命がいる
ではありません。
大気。
水。
磁場。
恒星活動。
その他いろいろ必要です。
でも「生命が生まれる場所そのものが存在しない」という逃げ道は、少しずつ狭くなっています。
じゃあ本当に、みんなどこにいるんですか。
ここから、 いろいろな仮説が出てきます。
まず一番単純なのが、
生命そのものが、とんでもなく生まれにくい。
という可能性。
惑星が何兆個あろうが、 生命が自然発生する確率が、 ものすごく低いなら、
地球だけでも不思議ではありません。
問題は、
生命が誕生する確率を、私たちはまだ知りません。
なぜなら、 確認できている生命の発生例が、 今のところ地球しかないからです。
サンプル数「1」です。
これ、 かなり大きな問題です。
地球では生命が生まれました。
だから、
生命は簡単に生まれる。
とは言えません。
逆に、 地球以外でまだ見つかっていないから、
生命は超珍しい。
とも言えません。
データが1件しかありません。
統計を取りたいのに、
宇宙最大の生命研究、サンプル数1。
困ります。
火星。
エウロパ。
エンケラドゥス。
系外惑星。
こうした場所で、 もし独立した生命が1例でも見つかったら、 話は一気に変わります。
微生物までは普通。でも文明が激レア説。
もう一つあります。
単純な生命なら、 宇宙中にいる。
でも、
知的文明まで進化するのが、とんでもなく難しい。
という可能性です。
地球を見ても、 生命そのものはかなり昔から存在しています。
でも、 電波望遠鏡を作る文明が登場したのは、 宇宙規模で見ればつい最近。
恐竜は、 1億年以上繁栄しました。
でも、
電波望遠鏡は作りませんでした。
長く生き残ることと、 技術文明になることは別です。
知的生命まで来ても、宇宙へ出ない説。
さらに、 知的文明が誕生したとしても、
宇宙進出するとは限りません。
電波通信もしないかもしれない。
巨大建造物も作らないかもしれない。
探査機も飛ばさないかもしれない。
そもそも、
私たちが想像する「文明」とまったく違う可能性があります。
人類はどうしても、
宇宙人も電波を使う。
宇宙人も都市を作る。
宇宙人も宇宙船を飛ばす。
と考えがちです。
でもそれ、かなり人類寄りの想像です。
実は信号を出している。でも気づいてない説。
これも十分あり得ます。
私たちは現在、 SETIなどで地球外文明由来の可能性がある電波信号を探しています。
でも、 宇宙は広い。
周波数帯も広い。
観測時間も有限。
探せる恒星の数も有限。
つまり、
人類は宇宙のほんの一部しかちゃんと聞けていません。
広大な海で、 コップ一杯の水をすくって、
「魚いないですね」
と言っているような可能性もあります。
しかも文明の「放送期間」が短いかもしれない。
ここも重要です。
地球が強い電波を宇宙へ漏らすようになってから、 まだ100年程度です。
宇宙の時間から見れば、
ほぼ一瞬です。
もし別の文明も、 強い電波を外へ出す時代が数百年程度しかないなら、
文明A。
文明B。
両方が同時期に電波文明である必要があります。
しかも、 信号が届く距離にいる必要もある。
宇宙人同士、すれ違い問題です。
文明が誕生しても、すぐ滅びる説。
ちょっと嫌な可能性もあります。
高度な文明になると、 自分たちを破壊できる技術も手に入ります。
核兵器。
環境破壊。
資源問題。
その他、 未来の未知の技術リスク。
もし文明が、 宇宙へ本格進出する前に高い確率で滅びるなら、
銀河全体へ広がる文明が見つからない理由になります。
そして、 この話から出てくる有名な考え方があります。
グレートフィルター。
グレートフィルターって何?
生命が誕生して、 宇宙文明になるまでには、 いくつもの段階があります。
生命が誕生する。
複雑な細胞になる。
多細胞生物になる。
知性を持つ。
技術文明になる。
長期間生存する。
宇宙へ進出する。
このどこかに、
ほとんどの生命が突破できない、とてつもなく難しい関門があるのでは?
という考え方です。
それが、 グレートフィルター。
問題は、そのフィルターが「前」か「後」か。
ここ、 ちょっと怖いです。
もし生命誕生そのものが超難しいなら、
人類はすでに最大の難関を突破しています。
複雑な生命になることが超難しいなら、 それも突破済み。
つまり、
「人類、めちゃくちゃ運が良かった」
で済みます。
でも、 もしグレートフィルターが
文明誕生より先にある
としたら?
高度文明は必ずどこかで滅びる。
宇宙進出する前に終わる。
もしそうなら、
人類はまだ最大の関門を通過していないことになります。
……急に怖くなりました。
だから火星で生命を見つけたら「めでたい」だけじゃない。
普通なら、 火星で独立した生命が見つかったら、 ものすごい発見です。
もちろん、 科学的には大ニュースです。
でもグレートフィルターの考え方では、 少し不気味な解釈もできます。
もし、 地球と火星で別々に生命が簡単に誕生していたなら、
生命誕生は「難関」ではない可能性が高まります。
すると、 難関はもっと先にあるのかもしれない。
知性。
文明。
文明の長期存続。
どこか。
宇宙人を見つけても怖い。見つからなくても怖い。
フェルミのパラドックス、 扱いが難しすぎます。
「実はもう来てる」説はどうなの?
当然、 よく出る話です。
UFO。
現在ではUAPという言葉も使われます。
しかし、
未確認飛行現象=地球外文明ではありません。
「何なのか特定できていない」 という意味であって、
宇宙人の宇宙船だと確認された、 という意味ではありません。
現在まで、 科学的に確認された地球外文明の訪問証拠はありません。
分からないものを、分からないままにしておくのも科学です。
ここは冷静にいきます。
「動物園仮説」という変わった案もあります。
かなりSFっぽいですが、 有名な仮説の一つです。
高度文明は存在している。
でも、
意図的に地球文明へ接触していない。
地球を保護区のように観察している。
だから証拠が出てこない。
これが、 いわゆる動物園仮説。
面白いですが、 今のところ証拠はありません。
仮説としては楽しい。でも確認できなければ答えにはできません。
「宇宙が広すぎて会えない」だけかもしれない。
これは非常に現実的な問題です。
前の記事で、 光ですら宇宙では遅く感じる話をしました。
最寄りの恒星まで、 光で4年以上。
天の川銀河の直径は、 約10万光年規模。
つまり、 文明同士が銀河の反対側にいたら、
メッセージ片道で何万年という世界です。
「こんにちは」
と送る。
5万年。
返事が来る。
さらに5万年。
会話1往復10万年。
LINEだったら、 既読どころの話ではありません。
文明が銀河を埋め尽くすなら、もっと痕跡があってもいい。
一方で、 フェルミのパラドックスが厄介なのはここです。
宇宙船が光速よりずっと遅くても、
文明が少しずつ恒星間へ広がるなら、
銀河の年齢と比べれば、 比較的短い時間で広い範囲へ進出できる可能性があります。
自律探査機を送る。
次の恒星からさらに探査機を送る。
これを繰り返す。
そう考えると、
銀河のどこかに高度文明の痕跡があっても不思議ではない。
でも、 見つからない。
だから「どこにいるの?」が消えません。
実は、人類が早すぎる可能性もあります。
これも面白いです。
宇宙は約138億歳。
十分古いように感じます。
でも、 赤色矮星のような小さな恒星は、 将来ものすごく長期間存在できます。
すると、 生命が存在できる宇宙の全期間で考えれば、
人類はかなり早い時代に登場した生命なのかもしれません。
つまり、
「誰もいない」のではなく、「まだみんな生まれてない」。
という可能性。
宇宙人を探していたら、 まさかの先頭集団説です。
逆に、みんなとっくに滅びた可能性もある。
宇宙には時間差があります。
1000光年先を見ると、 1000年前の姿。
100万光年先なら、 100万年前。
つまり、
私たちは遠い文明の「現在」を見ることができません。
今そこに文明があっても、 まだその光は届いていないかもしれない。
逆に、 見えている頃には、 すでに滅びているかもしれない。
距離だけじゃなく、時間までズレています。
宇宙で友達作るの、 難易度高すぎです。
そして、地球そのものが珍しすぎる説。
液体の水だけでは足りない。
安定した恒星。
適切な惑星サイズ。
長期間安定する軌道。
大気。
磁場。
プレート運動。
巨大惑星の配置。
月の存在。
こうした条件の組み合わせが、
実はものすごく珍しいのではないか
という考え方もあります。
いわゆる レアアース仮説 です。
ただし、 どの条件が生命や文明に本当に必須なのかは、 まだ分かっていません。
地球しか知らないので、地球を基準にしすぎている可能性もあります。
そもそも「生命」の探し方が間違っている可能性。
私たちは、 生命を探すとき、 地球を参考にします。
水。
炭素。
酸素。
メタン。
地球型惑星。
当然です。
他に生命の実例がありません。
でも、
宇宙の生命が必ず地球型とは限りません。
全然違う化学。
全然違う環境。
私たちが生命だと認識できないような存在。
可能性だけなら、 いろいろ考えられます。
宇宙人を探しているのに、「地球人っぽい宇宙人」しか探せていないかもしれません。
ジェイムズ・ウェッブも、この謎に少しずつ近づいています。
現在は、 系外惑星の大気を調べる技術も進んでいます。
惑星が恒星の前を通過するとき、 恒星の光の一部が惑星大気を通過します。
その光を分解すると、
大気にどんな物質が含まれているかを調べられる場合があります。
水蒸気。
二酸化炭素。
メタン。
その他の分子。
将来的には、 生命活動の手掛かりになり得る バイオシグネチャー を探す研究も重要になります。
ただし、
「この分子があった=宇宙人発見」
ではありません。
生命以外でも作られる可能性を、 一つずつ潰す必要があります。
もし微生物が1匹見つかったら、宇宙観が変わります。
別に、 いきなり宇宙船を見つけなくてもいいんです。
火星の地下。
エウロパの海。
エンケラドゥス。
どこでもいい。
地球とは独立して誕生した生命が見つかれば、
「生命は宇宙で2回以上生まれた」
ことになります。
サンプル数1から、 サンプル数2。
たった1増えるだけ。
でも、
宇宙生物学では、その「1」がめちゃくちゃデカい。
生命は珍しいのか。
普通なのか。
初めて比較できるようになります。
でも知的文明を見つけたら、もっとすごい。
もし人工的な電波。
レーザー。
巨大構造物。
人工的としか思えない化学物質。
何らかの テクノシグネチャー が確認されたら、
人類史最大級の発見になります。
地球だけではなかった。
知性が、 宇宙で少なくとも2回誕生した。
その瞬間、
フェルミのパラドックスは「誰もいない」から「いた」に変わります。
……見てみたいですね。
でも今のところ、宇宙は静かです。
探査しています。
電波も聞いています。
系外惑星も調べています。
太陽系内も探しています。
それでも、
地球外生命の存在を確認した例は、まだありません。
これは、
宇宙人はいない
という証拠ではありません。
まだ見つけていないだけかもしれない。
探し方が悪いのかもしれない。
遠すぎるのかもしれない。
時代が合っていないのかもしれない。
本当に珍しいのかもしれない。
答えがないから、全部残っています。
個人的には、ここが一番やばい。
考えてみてください。
夜空には、 星が大量に見えます。
見えない星は、 その何倍もあります。
その周りに、 惑星があります。
さらにその外には、 別の銀河があります。
それが、 宇宙の至るところにある。
なのに今のところ、
「こんにちは」
が一件も確認されていません。
誰かがいる方が自然な気もする。
誰もいないなら、 それはそれで異常なほどすごい。
宇宙人がいてもやばい。いなくてもやばい。
フェルミのパラドックス、 逃げ道がありません。
今回のコレやばい指数
※「コレやばい指数」は当サイト独自の表現で、 科学的な評価指標ではありません。
今回の話をまとめます。
宇宙には、 膨大な数の恒星があります。
惑星も、 珍しい存在ではないことが分かってきました。
生命が存在できる可能性のある環境も、 少しずつ見つかっています。
それなのに、
地球外文明の決定的な証拠はまだ見つかっていません。
生命そのものが珍しいのか。
知的生命が珍しいのか。
文明がすぐ滅びるのか。
遠すぎるのか。
時間が合わないのか。
探し方が間違っているのか。
まだ誰も生まれていないのか。
答えは分かりません。
でも、
夜空がこんなに星だらけなのに、答えがまだ一つもない。
そこが、 最高に面白いです。
誰かがいても大事件。誰もいなくても、それ以上の大事件かもしれない。
参考・出典
- NASA Exoplanet Exploration ― 系外惑星の発見・居住可能性について
- NASA Astrobiology ― 地球外生命探査・生命居住可能性について
- SETI Institute ― 地球外知的生命・テクノシグネチャー探索について

